401(K) を導入しているアメリカの会社に入社すると、はじめに 401(K) をどう設定するかを決めなくてはいけません。Roth などという聞きなれない用語も出てくるところなので、まとめてみました。
401(K) とは
401(K) は確定拠出型年金のことで、それに対する制度は確定給付年金です。
- 確定給付:古典的な企業年金制度。企業が年金を運営し、従業員が老後受け取ります。従業員としては受け取れる年金額があらかじめ補償されているので「給付が確定している」というわけです。会社が倒産したらどうなんるんだという問題があります。JAL が実質的に経営破綻した時に話題になりました。
- 確定拠出:最近取り入れられてきている制度。年金になるものを現役時代に毎月払込み(拠出)、自分で運用していって将来引き出します。「拠出が確定している」が運用によって老後受け取る「給付額」は確定していないわけです。上手く運営すれば受取額は大きくなりますし、失敗すると減りますが、それも自分の責任です。
マッチング
さてアメリカでは matching という用語が出てきます。これはなんでしょう。
日本版 401(K) には企業型と個人型があり、企業型では会社が全額を拠出します。
日本版 401(K) には企業型と個人型があり、企業型では会社が全額を拠出します。
- 企業型:取り入れている会社で働いている時。毎月全額を会社が拠出(=我々の 401K 口座にいれる)してくれます。
- 個人型:導入している会社をやめた時や自営業の人。毎月自分で拠出(=401K 口座に入れる)していきます。
401(K) にはマッチングの他に、後述するとおり所得税に関するメリットがあります。
年金の種類
さらに制度には、PreTax / Roth 401(K) / Traditional After-Tax といったものがあります。これは何でしょうか。入社時にこれらをどう設定するかを決める必要が出てきます(後でも変えることもできます)。
1. Traditional 401(K)
いわゆる企業型 401(K)。Pre Tax 401(K) とも呼ばれていたりします。401(K) 口座への拠出は給料から天引きによって行われるわけですが、天引きされた残りの給料に対してのみ連邦所得税(Federal Income Tax)がかかるので、社員にとっては所得税が安くなるメリットがあります。将来年金を受け取るときには税金がかかるのですが、一般的な人ならば、その頃には他の収入があまりないので、かかっても多くの所得がある現役時代に課税されるより良いわけです(Tax Deferred といいます)。
2. Roth 401(K)
これは Traditional 401(K) と違い、拠出額を非課税扱いにすることはできません。しかし、将来年金を受け取るときに全額非課税扱いとなります。老後に今よりも収入が多くあるという(羨ましい)人は、先に課税されておいた方が有利なのです。ちなみに Roth は立法に関わった議員の名前です。こちらの場合も会社がマッチングしてくれます。
3. Traditional IRA
IRA は Individual Retirement Agreement の略で、個人の退職年金プランの一つです。401(K) を導入していない企業の人や、自営業の人のためのもの。銀行などでも開設できます。ちなみに一見似ている IRS は Internal Revenue Service で、国税庁のことです。Traditional IRA は、Traditional 401(K) と同様の課税処理の個人型プランです。
4. Roth IRA
こちらは Roth 401(K) と同様の課税処理の個人型版です。
まとめるとこうなります。
まとめるとこうなります。
拠出時は非課税
老後受取り時に課税
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拠出時に課税
老後受取り時は非課税
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401(K):導入企業で働いている人
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Traditional 401(K)
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Roth 401(K)
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個人型:非導入企業の人や自営業
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Traditional IRA
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Roth IRA
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Traditional と Roth、どっちを選ぶべき?
結局どの制度にするべきかということなのですが、ざっくり言うとこういうことです。
- Traditional : 老後には所得がないのでその時に課税された方が得な人。普通のサラリーマンはこっちですよね。
- Roth : 老後に今以上の所得があるので今のうちに課税されたほうが良い。これって不動産収入とか役員収入とか印税とか?…いわゆる勝ち組でしょう。
そもそもアメリカで年金貯蓄する?
老後をアメリカで過ごすかどうかが、まだわからない人は、給料から 401(K) に拠出してゆくべきかどうか迷うところです。401(K) は 59 歳 6 ヶ月になるまで引き出せず、それより前に引き出す場合には 10% のペナルティを取られますからです。
例えば、年間 3,000 ドルまでは 100% マッチングしてくれる会社の場合。いやらしい計算ですが、年間 3,000 ドル拠出にしておけば、会社がもう 3,000 ドルあなたにくれるわけで、万が一1年後に中途脱退することになって、10% のペナルティ 600 ドルを支払っても 2,400 ドルのプラスになる…と考える人もいます。