アメリカの自動車保険の中の各項目について、一度きちんと理解しておこうと調べました。※あくまでの私の理解ですので、誤りがあっても責任は持てませんのでご了承ください。
保険の契約の中には、以下の項目があります。
保険の契約の中には、以下の項目があります。
賠償責任補償 (Liability Coverage)
対人および対物の補償。我々が事故を起こしてしまった際に、相手側の車と人に対する補償をする保険です。一番大切な保険で、必ず入らなくてはいけません。
Full Tort と Limited Tort
これがペンシルバニア州独特のものです。ペンシルバニア州では、車の保険契約の際に、このオプションを選ぶ必要があり、みんなが混乱しています。Tort とは辞書では「不法行為」のことですが、法律用語で「Civil wrongdoing」という意味だそうです。”Civil wrongdoing – in civil law, a wrongful act for which damages can be sought by the injured party.” 「民法において、被害者側によって不正に請求される損害賠償」といったところでしょうか。
過去に事故に起因する精神的苦痛(pain and suffer)を賠償しろという訴訟が増加し続けていました。賠償訴訟に対応する費用は保険料に跳ね返り、自動車保険料は高騰していました。このオプションは、これを食い止める目的でペンシルバニア州が作ったものです。
Full tort も Limited tort も、本人の過失に起因しない事故で、本人または同乗者が怪我をした際に適用される話です。Limited Tort でも、過失のある車の運転者に対し、医療費や損害といった実際に被害者が支払うことになった金銭については補償されますが、事故により被った痛みや苦痛については、支払いを求める訴訟を起こすことができません。これに対し、Full Tort では、医療費に加えて、苦痛に対する対価も求める事ができます。
保険を検討している時に、複数のサイトに「多くの人は、保険料を節約するために Limited Tort を選びますが、長い目で見るとどうでしょう。我々は Full Tort を強くお勧めします。」と語られているのですが、よく見ると多くは弁護士のサイトでした。彼らとしては、訴訟を起こす前から権利を放棄されてしまっていては商売あがったりですもんね。でもどうでしょう、我々が訴訟を起こしたりまでするでしょうか。というわけで、私は初めは鵜呑みにして Full Tort にしましたが、後に Limited Tort に変えました。
この選択が人々を混乱させているのは、この「自分たちに対する補償」についての選択によって、対人・対物補償という「相手に与えてしまった場合の支払いに対処するための補償」の年間の保険料(Premium)が変わってくるからだと思います(下図の赤い矢印)。何についての保険なのかが、ごちゃごちゃになってくるのです。
無保険者保険 (Uninsured Motorist Coverage)
相手の過失による事故で、相手が無保険者であった場合(相手が無保険者である証明が必要)、こちら(運転者)及び同乗者の負傷に対する補償をしてくれる保険です。保険には必ず入らなくてはいけないので、相手が無保険という場合は少なそうです。次の保険不足者保険の方が大事そうです。
保険不足者保険 (Underinsured Motorist Coverage)
こう訳語をつけてみましたが、無保険者と似たもので、相手の過失による事故で、相手の保険が足りなかった場合に、こちらの負傷に対する補償をしてくれる保険です。実は保険料(Premium)が高騰していることもあり、かなり多くの人が、最低限の保険しかつけていないそうです。その場合の補償は、被害者一人あたり $15,000 (約150万円)程度。被害者となった時にこれしか補償されないのでは、問題なので、このオプションを付けておいたほうが良いわけです。
With Stack / Without Stack とは
ところで、無保険者保険・保険不足者保険には、Stacking(積み重ね)という条項があり、更に混乱させてくれます。これは「With Stacking(積み重ねる)」か「Without Stacking(積み重ねない)」を選択することになるのですが、複数の車を所有して一つの保険契約に入れている場合で事故に遭った時に、それぞれの無保険車保険の補償を積み重ねて請求できるようにしておくか、この権利を放棄するかというものです。放棄すると請求できる金額は少なくなりますが、当然年間の支払い保険料(Premium)は安くなります。
なお、複数の車を所有する場合にのみ関係してくるものなので、一台のみの場合は、通常自動的に「Without Stack」になります。
私は Stacking を選びました。車を 2 台所有する際の保険料は倍というわけではなく、二台目はかなり割り引かれるので、Stacking にしても大した保険料にはないからです。
契約書類上は、「REJECTION OF STACKED UNINSURED AND UNDERINSURED MOTORIST COVERAGE LIMIT」すなわち「無保険者保険の補償の積み重ねの拒否に関して」という書類にサインする(放棄する=Without Stacking)か、しないかという手続きにでした。
なお、複数の車を所有する場合にのみ関係してくるものなので、一台のみの場合は、通常自動的に「Without Stack」になります。
私は Stacking を選びました。車を 2 台所有する際の保険料は倍というわけではなく、二台目はかなり割り引かれるので、Stacking にしても大した保険料にはないからです。
支払う
年間保険料
|
補償の請求
|
例)2 台各々に「1 人 10 万ドル 1 事故 30 万ドルまで」を設定した場合
| |
With Stacking
|
▲
高い |
◎ 複数の車の保険を積み重ねて請求可
|
1 人 20 万ドル 1 事故 60 万ドルまで
|
Without Stacking
|
◎
安い |
▲ 1台分に設定した補償しか請求できない
|
1 人 10 万ドル 1 事故 30 万ドルまで
|
車両保険 (Comprehensive Coverage and Collision Coverage)
自分の車への損害に対する補償です。
- Comprehensive は、盗難・火災等による車への損害に対する補償。
- Collision は、自損事故による車への損害に対する補償。
自己負担額(=免責額=Deductible)の設定があり、この金額までは、まず自腹で払わなくてはいけません。それを超えた修理費を保険がカバーしくれます。つまり、自己負担額が $500 で、$1,500 の修理費がかかった場合には、自分で $500 を支払い、保険会社が $1000 を払ってくれます。
というわけで、自己負担額(=免責額=Deductible)を大きく設定するほど、当然毎年支払う保険料(Premium)は安くすみます。事故に遭った時の自腹が多いので。
その他、車両保険に付随するオプション
- Towing and Labor: レッカーが必要になった場合の費用を出してくれる。
- Roadside Assistance: ロードアシスタンスサービス。私の保険には「24時間の全米及びカナダ、ただしニューヨークを含まない」とありました。
- Extended Transportation Expenses Coverage: 事故によって車が修理に出ている間のレンタカー費用などを補填してくれる。点検での修理工場入りは含まない。
- New Car Replacement Coverage: 車両保険でカバーされるのはその時のその車の価値分であり、中古価格です。全損により新車を購入する必要が出た場合に、その差を埋めてくれるのがこのオプションです。