2014年7月16日

COBRA :アメリカで会社を辞めた時の医療保険の継続

会社を退職し、他の会社に入社しない場合の医療保険の話です。日本で会社を辞めた時には、健康保険は任意継続するか、国民健康保険に加入するかでしたが、アメリカではどうでしょうか。アメリカは、日本と違い「国民皆保険」ではありませんので、入らないという危険な選択肢もありえます。
  1. 個人で民間の保険に加入する
  2. COBRA
  3. 無保険者になる?
この COBRA について説明します。

COBRA

コブラは、日本で言うところの任意継続にあたるもので、会社員およびその扶養家族が医療保険の資格を喪失した時に、それを一定期間(退職の場合 18 ヶ月)継続できるというものです。当然、保険料は全額自分で負担することになります(というより 2 %上乗せされることもあります)。そのため、上記 1. の個人で別の保険に入った場合のほうが保険料が安い場合もよくあります。手続きは、資格喪失(退職)後、60 日以内に行う必要があります。
ちなみに、正式名称は、Consolidated Omnibus Budget Reconciliation Act (包括予算調整法)で、1985 年、レーガン大統領の時に連邦議会で可決されました。

適用対象となるライフイベント

COBRA は、退職以外でも対象になりえます。具体的には、会社員および扶養家族が以下の「対象となるライフイベント(Qualifying Events)」によって保険の資格を喪失した時に適用できます。

社員本人については、以下のライフイベントによる保険資格喪失が対象となります。
  • 退職(重大な違法行為による解雇を除く)による資格喪失
  • 勤務時間の減少による資格喪失 
その社員の配偶者については、以下のライフイベントによる保険資格喪失が対象となります。
  • 配偶者である当該社員の退職(重大な違法行為による解雇を除く)による資格喪失 
  • 配偶者である当該社員の勤務時間の減少による資格喪失 
  • 配偶者である当該社員のメディケア(高齢者向け公的医療保険)資格取得による(現保険の)資格喪失
  • 配偶者である当該社員との離婚または法的別居による資格喪失 
  • 配偶者である当該社員の死亡による資格喪失
その社員の子供については、以下のライフイベントによる保険資格喪失が対象となります。
  • 親である当該社員の退職(重大な違法行為による解雇を除く)による資格喪失
  • 親である当該社員の勤務時間の減少による資格喪失
  • 親である当該社員のメディケア(高齢者向け公的医療保険)資格取得による(現保険の)資格喪失
  • 親である当該社員の離婚または法的別居による資格喪失
  • 親である当該社員の死亡による資格喪失
  • 保険プラン上、親である社員の「扶養される子供」ではなくなった時

延長できる期間

どのライフイベントによって資格を喪失したかによって異なります。
  1. 退職または勤務時間減少による場合 : 18 ヶ月。これが一般的でしょう。
  2. 高齢で退職する場合の例外:退職または勤務時間減少による場合で、その資格喪失日(退職日など)の直前 18 ヶ月以内の期間に当該社員がメディケアの資格を取得する場合、配偶者及び扶養家族は、メディケア資格取得の日から 36 ヶ月の日まで延長できます(ただし COBRA の適用は退職日から)*。文章が複雑なのですが、例えば退職の 8 ヶ月前にメディケアの対象となる場合、配偶者と子供の資格は 28 (=36-8) ヶ月延長できます。8 ヶ月は会社の医療保険、28 ヶ月は COBRA で合わせて、メディケアの対象となった日から 36 ヶ月というわけです。
  3. それ以外:36 ヶ月。該当社員の死去や離婚による資格喪失はこれです。
* When the qualifying event is the end of employment or reduction of the employee's hours, and the employee became entitled to Medicare less than 18 months before the qualifying event, COBRA coverage for the employee's spouse and dependents can last until 36 months after the date the employee becomes entitled to Medicare.

従業員数の少ない会社の場合

なお、COBRA は従業員数が 20 人以上の会社に対する合衆国の法律です(Federal COBRA)。20 人未満の会社については、多くの州で州法がカバーしています。例えば、カリフォルニア州には  Cal COBRA、ペンシルバニア州やニューヨーク州には mini-COBRA と呼ばれる同様の州法があります。

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