2014年7月8日

アメリカの医療保険制度

アメリカの保険医療制度をおさらいしておきましょう。日本は、国民皆保険。会社員なら会社を通じて健康保険、自営業の人などは国民健康保険といった形で、全員が保険に加入し、どの病院にも行くことができます。どこに行ってもかかる医療費は原則同じです。

アメリカは国民皆保険ではありません。オバマ大統領の悲願ですが、反対にあい、うまく進んでいません。民間の保険会社(営利または非営利)への加入者が約 70%、高齢者・障害者むけのメディケアまたは低所得者向けのメディケイドといった連邦政府・州が運営する公的保険への加入者が 25% 程度、そしてどちらの保険にも加入していない人も 10 %以上います。


我々のような一般的な会社員は、会社を通じて民間の保険を契約します。つまり、入社時から一ヶ月くらいの間に、どの保険会社のどのタイプの保険にするかを選ばなくてはいけません。年に一回再選択するタイミングがあり、それまでは変えられません。

これがまた、マネジドケアといわれる、医療の質を確保しながら、不必要な医療コストを抑制することを目的とするといういかにも市場原理主義的な手法のために、複雑です。特に、他の国から来た人にとっては難しい選択です。


HMO と PPO

医療保険はいくつかのタイプに分類できますが、大きなものが、HMO と PPO です。

HMO (Health Maintenance Organization) は、保険会社サイド主導で登場したもので、まずは「かかりつけ医」に行った上で、保険会社からもらっているリストに載っている医院でのみ診てもらうことができるというものです。これを「In-network」とか「ネットワーク内の」医療機関といいます。実は専門的な治療になればなるほど、その医療機関のネットワークへの加盟率が低くなっており、最新医療などが受けられない場合や、複雑な治療について、主治医の許可が必要なために実際に治療が受けられるまでに時間がかかったりもします。良い点は自己負担額が少ない点で、たいてい 10 ドル程度払うだけで済みます。

PPO (Preferred Provider Organization) は、HMO に対抗して医療機関主導で生まれたもので、追加料金を払えば、ネットワーク外の病院に行っても、受け入れてもらえます。しかし、多くの場合、医療機関で支払う医療費は多めになります。

さて、HMO の専門治療が受けられない場合があるという問題は、近年訴訟によって改善されてきました。ところが、逆に訴訟費が HMO の財政を圧迫し、それが保険料にはね帰ってきました。つまり保険料が高騰し、PPO と変わらなかったり、むしろ高くなったりしているのです。保険料の安い HMO のはずがもうわけがわかりません。

さらに、市場ニーズに答えて他のタイプも生まれています。例えば、POS(Point-of-service plan)。これは、HMO のオプション的位置づけで、かかりつけ医には行かなくてはいけませんが、追加料金を払うことで、ネットワーク外の医療機関も利用できます。また、EPO(Exclusive Provider Organization)は、かかりつけ医には行かなくても良いですが、それ以外は HMO と同様というものです。


同僚いわく、一般的に特に子供がいる家族などは、PPO の方が良いと思っているそうです。なぜなら、その子が特定の病気を持っているなら、それに対する一番良い病院で看てもらいたいからです。

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